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電話の相手は、別部隊で動いている脇坂だ。消防に通報した第一発見者を捜す役目を任されていた脇坂だったが、返って来た返事はノーだった。
「まだ自宅には戻って来ませんね。携帯の電源もオフです。……事故じゃなさそうなんですか?」
第一発見者である九重皐の自宅前に停めている覆面パトカーの助手席で電話を受けた脇坂が、比嘉の声の雰囲気からそう感じ、シートに沈んだ尻の位置を動かした。その様子を運転席から見ていた戸塚も、凛々しく書かれた眉根を寄せている。
「その可能性が高いと思う。ただの勘だが」
「警部の勘は当たりますからね。分かりました。集中して監視を続けます」
脇坂が電話を切ると、戸塚が嘆息した。
「女の事件って、嫌ですね」
まるで自分は女ではないとでも言わんばかりの戸塚の言葉に、脇坂は小さく笑った。
鑑識官の所見通り、比嘉の目から見てもピザ以外に不審な点が見当たらなかった現場を後にした二人は、部屋に残されていた宅配ピザの店舗を訪れていた。
あいにく被害者宅にピザを届けた薮田は配達に出ていた。
店側の好意で、店内で薮田の帰りを待たせてもらっているが、川島には逆効果だったようだ。
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