第一話

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 渋々頷いた薮田を見て、比嘉は川島に写真を見せるように無言で頷いた。  スマートフォンに映し出された写真は、流血している部分が雑にではあるが黒く塗りつぶされていて、言われた通り、眠っているようにしか見えなかった。 「薮田さんが届けられた時も、この服装でしたか?」  予想外の質問内容だったのか、薮田は首を傾げながら肯定した。 「はい。服ははっきり覚えてないですけど、マフラーと手袋は覚えてます。同じ格好でした」 「不自然には思いませんでしたか?」 「え?」 「室内に居たのに、この服装だったわけでしょう?」 「さあ、特に何も思いませんでしたけど。……あ、そうか。外に居たんで。このお客さん」 「外に?」  思わぬ言葉に、比嘉と川島は目を合わせた。 「この寒い中に外で待ってたんですか?」  川島が訊くと、薮田は頷いた。 「はい。そうです」 「部屋の中を見られたくなかったんですかね?」  川島は比嘉に対して訊いたが、薮田がそれを否定した。
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