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渋々頷いた薮田を見て、比嘉は川島に写真を見せるように無言で頷いた。
スマートフォンに映し出された写真は、流血している部分が雑にではあるが黒く塗りつぶされていて、言われた通り、眠っているようにしか見えなかった。
「薮田さんが届けられた時も、この服装でしたか?」
予想外の質問内容だったのか、薮田は首を傾げながら肯定した。
「はい。服ははっきり覚えてないですけど、マフラーと手袋は覚えてます。同じ格好でした」
「不自然には思いませんでしたか?」
「え?」
「室内に居たのに、この服装だったわけでしょう?」
「さあ、特に何も思いませんでしたけど。……あ、そうか。外に居たんで。このお客さん」
「外に?」
思わぬ言葉に、比嘉と川島は目を合わせた。
「この寒い中に外で待ってたんですか?」
川島が訊くと、薮田は頷いた。
「はい。そうです」
「部屋の中を見られたくなかったんですかね?」
川島は比嘉に対して訊いたが、薮田がそれを否定した。
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