第一話

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 愚痴を溢した川島も、当然それは理解している。理解した上での愚痴だ。そして、比嘉もそれを分かった上でたしなめていた。  管理人と共に部屋を訪れた第一発見者は、警察ではなく消防に連絡していた。この日被害者の部屋を訪れると約束をしていた第一発見者の女は、消防に連絡後、管理人を現場に残し、連絡が取れない被害者家族の家を直接訪ねると言ってその場を離れた。  その後、到着した救命士が明らかに死亡していると認め、規定に従い警察に通報してきたのは、午後一時を過ぎた頃だった。 「でも、施錠されていた部屋の中……というか、玄関を上がってすぐのところで倒れていたんですよ。足を滑らせて転倒しそうになって、慌てて下駄箱に手をついたけど、運悪く花瓶を落として、割れた花瓶の上に頭から転げた。もしくは、頭で花瓶を割った……って所でしょう」  川島はスマートフォンで撮影した現場写真を見ながらそう言った。
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