私の村には天使がいる

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 私の村には天使像があります。昔この村が戦争に巻き込まれて大飢饉にも襲われた時期。天使様が舞い降りて村を救ってくれたっていう伝説が長年語り継がれているんです。  村人は感謝と信仰を込めて、天使像を作り村に残しました。  村の奥、深い森の手前に天使像はあり普段は立ち入り禁止。私は、幼いころにあそこに行った事があるのです。  そして天使様と出会いました。  子供の頃、母が流行病にかかりました。医者なんていない、薬草でしのぐしかなかったのです。  薬草は他の人も取りつくしていて、残るは天使像のある森の中のみ。狼もいるし危ないから絶対に行ってはいけないけれど。幼かった私は、お母さんが死んじゃう、薬草を! その思いだけでした。  薬草はたくさん手に入れました。でも運悪く狼に出くわして、もうダメだって思ったの。 「たすけて……」  その時突然雷が落ちて狼は死にました。びっくりして周囲を見ると。 やけに神々しく見えた天使像。夜なのに、きらきら光っているように見えました。  天使様が、助けてくれたのです。  薬草で母は治りました。天使様は大切な存在。それを人びとにきちんと教えて、守っていかなければ。  私は神父様にそれを話しました。注意はされたけど、天使様の為に教会に来ないかと言ってくださったのです。 私の話をふんふん、と頷きながら聞く子供たち。私の話を聞きに、町からもこの教会に来る人が増えている。 「さあ、今日の話はおしまいです」 「わたし、明日もきます!」 「俺も! 父さんと母さんも一緒に教会に来る!」  天使様、天使様、とみんな嬉しそう。みんなを笑顔で見送って、教会の掃除を始める。 「たすけて」 その声に、少女ははっとして像を見上げる。 脛の部分がほんの少し欠けている。像の中に見えるのは。 真っ白い石膏の中から何かが見える。 「ああそうか。そういうことなのね。この像、ちゃんと骨組みがあるんだわ」 文字通りの、骨組みが。 修復しないとね。少女は村に戻り神父に報告した。それ以来、教会で活動している。 「ありがとう天使様。あなたのおかげで生きる道が見つかりました」 これからも、あなたを守っていきます。一生。
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