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そう言って部長は、返事を待たずに階段側へと歩き出してしまう。
「それなら私たちも!」
しかし彼女たちは強かった。素っ気ない部長の態度くらいではめげず、私を押し退ける勢いで割り込んでくる。
「わ……!」
ぶつかる! そう思って無理に方向転換を試みたのが良くなかった。
足首がぐにゃりと縒れて、視界があっという間に傾く。
(倒れる……!)
咄嗟に目を瞑ったけれど、予想していたような衝撃はやってこなくて。
まるでマットレスに飛び込んだ時のような柔さと弾力に薄く目を開けると、視界を埋め尽くしたのはグレーの生地にストライプ柄のネクタイだった。
「なあ」
あれ、これって。そう思うと同時、その場の全てを凍り付かせるような声が降ってきて、思考が固まる。
「君たちが今、この場で俺に伝えなければ、会社の経営が傾くような重大任務を仰せつかっているというのなら、話を聞こう」
息をするのも躊躇われるほど、鋭く無慈悲な言葉。
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