130人が本棚に入れています
本棚に追加
さすがの彼女たちも紅潮させていた顔を蒼くさせ、その場で硬直していた。
かくいう私も、転びかけた私を抱き止めるようにして助けてくれたのが東雲部長だということが分かり、別の意味で硬直している。
絶対に顔を上げられないし、なんならこのまま気を失ってしまいたかった。
あのご尊顔が顔を上げたらすぐそこにあるのかと思うと、体中から変な汗が噴き出しそうだ。
彼女たちが閉口していると、部長は私をゆっくりと抱え起こし、その場に立たせてくれた。
「怪我は無いか?」
かけられた言葉にやっぱり顔を上げることはできなくて、ひとまず首が千切れんばかりに頷いておく。
心配そうに眉を下げた部長は「やっぱりエレベーター使うか」と言うと、未だ固まったままの彼女たちを置いて、私の腕を優しく引きながらエレベーターに乗り込んでしまった。
戸惑いながら、最後に乗り込んできた横山くんを見上げる。
横山くんは苦笑を浮かべながら、肩を竦めたのだった。
……私たちは知らない。
東雲部長の姿が見えなくなった後、「……怒ってる顔も超かっこいい!」と彼女たちが騒いでいたことなど。
最初のコメントを投稿しよう!