第一話

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 そんな戸田さんの言葉に、松下さんもうんうんと頷く。  別に、田中さんはそんな変な人ではないんだけど……。  戸田さんは四十代前半の明るい男性。素敵な奥様と二人のお子さんがいる、子煩悩のよいお父さんだ。  私のことも娘のように可愛がってくれて、こうしてよく心配してくれる。──そんな彼の席も、一年前までは別の女の子の席だった。  異動してきた順で言えば、井上さん、横山くんの次に私で、その後に戸田さん、松下さんと続いていく。  ただ、戸田さんも松下さんも過去に人事業務を務めていた経験があるそうで、私はそんな二人にも頼りっぱなしだった。  私はというと、大学卒業後に入社した会社を一年も経たずに辞め、派遣社員としてこの会社の受付業務に従事していたところ、ありがたいことに声を掛けていただいて、二年前に正社員として人事部に配属された。  本格的な事務仕事はほとんど初めてで、アラサーに片足突っ込んでるくせにパソコンの扱いも覚束ず、毎日必死に働いている。
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