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支社に赴いた経験が無いとはいえ、場所はしっかり予習済だ。
そのため、緊張しながらも迷いなく歩いていれば、それまで静かだった東雲部長が突然「……フッ」と笑いだしたので、私は驚きのあまり思わず足を止めた。
「えっ、ごめんなさい道間違ってますか!?」
それとも、行き方を間違えているだろうか。
こんな道通るのかよコイツ、とかいう笑いだったりする!? とパニックになっていれば、いや、と部長が口元に手を当てながら少し顔を逸らす。
でも、その肩は小刻みに揺れていた。
「……君、かなり緊張してるだろう」
「え、はい」
「手と足が一緒に出てる」
ふふ、とまた堪えきれなかったように微笑まれ、恥ずかしくて顔が熱くなる。
カチコチになっている自覚はあったけれど、手と足が一緒になっている自覚は無かった。行進覚えたての小学生じゃないんだから、しっかりしてよ、私の体。
「……申し訳ありません」
もう何と言えばいいか分からず俯きながら謝れば、部長は「いやいや」とやや慌てたような声になった。
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