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「別に咎めてるわけじゃない。まあ、さすがに支社に着くまでにはもう少し緊張を解しておいた方がいいと思うが……行く前に、ひと休憩挟んでおくか?」
気遣うように近くにあったカフェを指差され、力なく首を横に振る。
……こんな風に気を遣わせてしまうなんて、情けない。
「大丈夫です。すみません」
「謝らなくていい。可愛らしいな、と思ってつい笑ってしまった俺が悪かった。気を悪くしないでくれ」
「…………?」
「まあ、今日は初めての視察だ。ただ俺の横に居て見学するだけで構わないから、そう気負うな」
なんだか部長の口からは到底出てきそうにもない単語が聞こえた気がして思わず顔を上げたが、そこに居たのは理知的で、精悍な、いつも通りの部長だった。
……気のせいか。いや、気のせいに決まってるでしょう。何考えてるの私。
緊張しすぎて耳までおかしくなったのかな……と憂鬱になりながら、さっきよりは幾らか自然な動きで、私たちは支社までの道のりを歩いていった。
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