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支社に着くと、先方の人事部長がすでにロビーで待機していた。
「東雲部長、お待ちしておりました」
どう見ても東雲部長の方が若いのに、直立不動の腰を深々と折る相手に、東雲部長は軽く手を挙げるのみだ。
受付に座る女の子たちは皆、突然現れたイケメンに呆気にとられていた。当然ながら部長は、そんな彼女たちには目もくれず人事部長の後ろを着いていく。
「案内はここまででいい。あとは適当に見る」
「畏まりました」
管理部門が集まるフロアに入ったところで東雲部長はそう言って、人事部長を帰してしまった。それから勝手知ったるように空いているミーティング席に座ると、入口のところで突っ立ったままの私を手招く。
「大丈夫か? また顔が緊張してるぞ」
「だ、大丈夫です」
頑張ります。硬い表情で頷いた私に、部長がくすりと笑う。
「気楽にな。俺から離れないでくれればいいから」
「はい」
「この後は適当に視察して、気になる点があれば質問したりする。機密情報の取り扱いがきちんと守られているか、とかな」
「なるほど……」
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