第一話

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「佐藤も、もし今までの業務の中で、この支社に対して気になっていたことなんかがあればこの機会に言うといい。折角だしな」  頷いたが、別に不満も無いので言うことも無い。  とにかく今日は、大事なことを聞き漏らさないよう、なるべく部長にひっついてメモを取ろう。そう決意して、私はペンを握りしめた。  実際に仕事をしている様子を後ろから見学させてもらったり、ファイリングされた資料を見せてもらったり。そうしている内にあっという間に時間は過ぎ去り、気付くとお昼休みになっていた。  昼休憩を報せるチャイムの音を合図に、資料室を訪れていた私と部長は部屋を出て、荷物が置いてあるデスクルームへと向かう。  お昼はどうしようかな。  あそこのミーティングテーブルをそのまま使わせてもらえるなら、コンビニで簡単に済ませちゃうんだけど。  そんなことを考えながら歩いていると、不意に隣から視線を感じた。見上げると、こちらを見つめる琥珀色とかち合う。
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