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そう微笑んだ黒木さんの視線が、ちらりと私に一瞬流れる。その視線は完全に邪魔者に対するそれで、ハッとして私はその場から去ろうとした。
二人で食事をしたいから気を利かせて退散しろ。とその眼力が言っていたので。
「あ、あの部長、私はお先に……」
へらりと笑いながらジリジリと後退すれば、その瞬間目にもとまらぬ速さで東雲部長の腕が伸び、私の手首を掴む。
ひえ。思わず喉が鳴って、ちょっと手を動かしてみたが、ますます掴む力を強められてしまった。
恐る恐る部長を見上げるけど、こちらを見ているわけでもない。
ただその手の力が、彼から立ち昇る雰囲気が、自分だけ逃げることは許さない。そう告げていた。
そんな私たちの様子に、黒木さんの凛々しい眉が不機嫌そうに跳ね上がる。
そして黒木さんが私に向かって口を開いた時、被せるように、氷柱の如く鋭く冷たい声が東雲部長から発せられた。
「お気遣いありがとう。ただ、既に先約があるので遠慮させていただこう」
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