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やっと通常業務に慣れてきたばかりで、正直なところ役に立てている自信は全く無かった。
他の四人は指示も仕事も的確で頼りになる。だけど私は、自分の仕事を捌くのに精いっぱいで。一人では解決できないようなことも、まだ沢山あって。
そんな私が視察に着いて行っても、部長の足を引っ張るだけなんじゃないか。迷惑をかけて、もし……もし、部長を失望させてしまったら。それが、怖い。
部長の目を見ていられなくなって、鼠色のカーペットに視線を縫い付けながら弱音を吐く。
東雲部長はしばらく黙っていたが、やがて降ってきたのは落ち着いた静かな声だった。
「佐藤は真面目だし、仕事もきちんとこなしてる。ちゃんと君の力量を見て、連れて行っても大丈夫だと、それが君の成長に繋がるだろうと判断したから声を掛けたんだ」
「あ……」
その言葉に弾かれるように顔を上げると、東雲部長は柔らかな眼差しで微笑んでいた。
「それとも、俺の判断が間違いだと?」
そんなこと、思っていたって言えるはずが無い。
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