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「いだだだだ! ギブ! ギブ! パワハラ!」
ぎりぎりぎり、とあまり人体からしてはいけないような音が横山くんから出ている。
まさか本気で締め落とすつもりでは無いだろうけど、思わずあわあわと狼狽えてしまうと、真っ赤な顔で騒ぐ横山くんを暫く眺めてから、部長はあっさりと手を離した。
「げほっ、ごほっ、ほんとひでー……」
唇を尖らせる横山くんの顔は酸欠でまだ赤い。
「お前が悪い」
そう言って、楽しそうに笑う部長。拗ねた顔の横山くん。二人をぽかんと眺める私。
漂い始めた穏やかな空気を切り裂いたのは、ねっとりと纏わりつくような猫撫で声だった。
「「東雲部長!」」
まるで部長の雰囲気が和らぐのを見計らったように、どこからともなく女の子二人組が飛び出してくる。勿論、先ほど会議室前で会った子達では無い。
くるんと上向く睫毛に、ぷるりと濃い目のリップ。細い指先を飾るネイルに、ふんわり巻かれた長い髪。スタイルの良さが際立つ、ちょっとだけ露出のある服。
女子力が私の数十倍はありそうなその子たちが、きゅるりと大きな瞳を潤ませながら東雲部長を見上げた。
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