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女性には、幼い頃から家族ぐるみで親しくしている双子の兄弟がいた。
彼らの容姿は瓜二つであったが、性格は対照的だった。
快活な性格の兄は、常に人の中心にいるような性分。勉学もよくできた。
対して弟は、何においても平凡で目立たない。詩や文学を好み、一人で読書に耽っていることが多かった。
成長した彼らは、兄弟で父親の商売を引き継ぐことになった。
高等教育を受けた兄が店主の座につき、義務教育しか受けなかった弟は補佐役に回った。
互いの両親と双子の兄は、いずれ主人公の女性が兄の結婚相手になるものだと考えていた。
やがて、彼女は双子の兄からのプロポーズを受けた。
彼女の誕生石であるターコイズの指輪が納められた小箱。
兄はそれを片手で差し出し、こう言い放った。
「私と結婚すれば、一生食うのに困らせない。私は商売で家を空けることが多いが、家のことを頼みたい」
ほどなくして、今度は弟の方からもプロポーズを受けた。
彼は彼女の前に跪き、思いを綴った自作の詩を朗読した。
それを終えると、99本の赤いチューリップの花束を差し出した。
「僕は兄さんほどの稼ぎはないけれど、きっと幸せにしてみせる。君がそばにさえいてくれたら、他には何も望まない」
彼女は、弟からの求愛に応じた。
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