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 三城はファミレスについてからも口数が少なくて、それを気にしつつ私も何を話せばいいのか調子が狂う。  ファミレスの大きな窓から外を眺める三城と、アイスコーヒーの氷をストローでもてあそぶ私。 「いっとき夢をみたいっていうじゃん?」  話しだした三城は相変わらず外を見たままだ。 「うん」 「気持ちわかるんだよな。でもさ、結局一回じゃ物足らないって言うかさ」 「だね」  人間は欲張りだから、それで満たされるわけがない。 「もっと一緒にいたくなる」  三城の口からそんなことを聞くなんて驚きだけど、三城だって普通に人間なのだからおかしいことでもないなと考え直して聞いていた。 「雪、降りそう」  唐突に話の方向を変えてきた三城につられて、窓の外を見上げた。確かにこの曇り空は怪しい。 「ホントだね。電車止まったら困るな」  本気で天気が気になって、スマホで天気予報をチェックしだした。 「雪降ればいいのに。電車も止まっちまえ」  夕方から雪が本格的に降るという予報を見ながら私は顔を顰める。 「そんなの帰れなくなる」 「帰んなよ」  思わず顔を上げる私に、三城はやっとこちらを向いた。 「いっとき夢みたいじゃん」  気の利いた言葉で返そうとしているのに、なかなか言葉が出てこない。 「い、一回じゃ物足らないって言ったじゃん!」  三城が笑って「その通り。俺の想いの重さを思い知れ」と、伝票を掴んだ。 「え?」  三城はなかなか立たない私の腕を掴んで立ち上がらせる。 「とっかえひっかえ、男かえやがって。葵なんか俺が忘れさせてやるっつうの」  三城に連れられて、店を出た。既に雪がフワフワと舞い降りていた。  堕落した私たちはその夜、雪がシンシンと降っていたことに気がつかなかった。
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