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 コテージは、二階部分が寝室になっていて、窓から裏手が一望出来る。  その展望を確保するために、コテージの裏は木が伐採されているので、テントはそこに設置することに決めた。  大人が3人で余裕があるテントを二つ、今回の参加者は総勢10名で、蔵人を含めた6人がテントで夜明かしをする予定だが、途中でコテージに移るのも良いルールにしてある。 「なぁ、ペグってこっち向きでいいの?」 「いや、逆だ。もうちょっと力入れて、打ち込んで…」  蔵人に説明を受けながら、友人たちは和気あいあいとテント設営をする。 「あ〜、俺もコテージ組になって、釣りにいきゃ良かった〜」 「どーかなぁ? トーマは鮎を釣るって息巻いてたけど、友釣り用のオトリから捕まえるとか、めちゃめちゃ言ってたぞ?」 「そーいえば、美咲って、ホントに美咲更紗の息子なんだって? どーりで綺麗な顔してるよなぁ」 「バッカ、そりゃ禁句だってーの」 「本人の前で、言わなきゃいーんだろ? てか、トーマは一服の清涼とか言ってたけど、それを独り占めしてんじゃん」 「ご面相はオンナ顔でも、本体は男だし」 「バッカ! ホントに付き合えるワケでなし、観賞用つってんだろ!」  その場にいた者が一斉に笑った。 「でもぶっちゃけ、俺はアイツ苦手だな。話掛けても返事しないし」  テントの設営が一段落した辺りで、リラックスした友人たちは、水分補給などをしながら木陰に座り込んだ。 「それはあるな。見た目が良くても、中身が合わなきゃなぁ」 「それって、美咲の話じゃなくて、おまえのカノジョ感じゃね?」 「なんだよ! 悪いかよっ!」 「てか、喋るとかって以前に、トーマがずっと連れ回してて、俺らが話すチャンスもないじゃん」 「そーいうのなら、俺らに相談もせず、参加決めてんじゃん。てか、周防も言えよな!」 「言ったし。特に苦情も出なかったし…」  蔵人は、特には(だれ)の擁護もしなかった。  綺紗羅の容姿を値踏みする友人たちに、微妙に腹立たしさを覚えていたのだが。  軽口で盛り上がっている彼らのテンションに、水を差すのもどうかと思って、それを口に出せなかったのだ。 「クラちゃーん」  背後から、冬馬の声が聞こえ、振り返ると釣りに行った(もの)たちがゾロゾロと引き上げてきていた。  それだけならば、なんという事もなかったが。  思いの外、近くに綺紗羅が立っている。  その距離は、微妙に皆の会話が聞こえたかもしれない。  綺紗羅の顔は、相変わらずの仏頂面で、特に感情が浮かんでいないために、話を聞かれたのかどうかも判らない。  蔵人は、微妙な後ろめたさから、綺紗羅に声を掛けられなかった。 「いや〜、ルアーで最初の一匹釣ったら、(あと)はもう芋づるでさぁ。一人二尾ってとこで、切り上げてきたよぉ〜」 「そっか。じゃあ、今夜はごちそうだな」  冬馬は、肩から下げていたクーラーボックスを差し出した。 「へえ、やったな。じゃあ、夜までに下拵えしておくよ」  蔵人は、クーラーボックスを受け取ると足早にその場を去った。
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