最終回がやってくる

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中には釣り鐘が描かれた緑色の切手が何枚も、いや何十枚もまとめて入れてあった。デザインが違う記念切手らしいのもあるけど、全部60円切手だ。 同じ物がなぜこんなにたくさんあるんだろう。 空想が広がり、答えらしきものに辿り着く。 もしかしてこれは、ペンフレンドから届いた手紙の切手かな? そうだ、ばあちゃんは確か遠い東北の人だったはず。ペンフレンドから結婚に発展したって事もありえる!昔はそういう恋愛もあったはずだ。 手紙は別にきちんととっておいて、切手だけをここに集めていたのかも。 だとしたらますます捨てにくいなあ。 じいちゃんばあちゃんの青春、プライスレス。 そして俺は段ボールとブルーシートの秘境を更に奥地へ進む。変な虫とか出て来そう。 どうしてこんなになるまで放っておいたのだろう。いやでも、物置きってそんなものだろ実際。 「あっ」 そして俺はまたもや秘宝を発見した。 そうだ、この驚きと喜びを感じる為に俺は物置きをほったらかしにしていたのだ。 そういう事にしておこう。 発見された新しい秘宝。 それは、子供の頃人気があったアニメのキャラクターの消しゴムだ。 家にあった中で一番丈夫そうで大きさも手頃だった白い段ボール箱に詰め込んだ、重さ2キロにもなる消しゴム達。 いや、消しゴムとは名ばかりで、本当に使ったら紙が再起不能になるのは誰でも知っているだろう。 だけどあの頃、友達みんながこれを集めてた。 どんな人気番組にも最終回がある事を教えてくれたのは、あのアニメだったかもしれない。 本当に終わるのかってみんなで騒いで、テレビの前でしっかり見届けた。 それなのに全然実感がわかなかったのを覚えてる。 重さ2キロは相当なものだけど、なんの俺なんて大した事ないない。 マサシは部屋中消しゴムだらけだったし、ユータはお金持ちでレアキャラをたくさん持ってて、キャラクター以上にヒーローだった。 あいつら元気にしてるかなあ。今頃どこにいるんだろう。 でも、就職して家を出た後にじいちゃんが 「なぜこんな邪魔な物を後生大事にとっておくのか」 とか言い出して捨ててしまったと聞いてたんだ。 なぜ残ってるんだろう。
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