最終回がやってくる

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お片付けあるある。 思い出の地雷原にぶち当たって一日撃沈。 さっきは懐かしい漫画が出て来て、全巻あるはずだと探したくなった。もしもあの時、一冊でも開いていたら今日の物置き大冒険は失敗に終わっていただろう。危ない所だった。 「おっ」 そしてまたもや、秘境の様な物置きで思わず変な声を出す俺。 古いアルバムだと思って開いた黒い表紙の分厚い冊子。だけど、その中には切手がいっぱいだったから。 これは切手を保存する専用のアルバムかな。初めて見たけど多分、亡くなったじいちゃんのコレクションだろう。 一枚一枚が小さなキャンバスに描かれた絵画の様な色とりどりの紙片達。 「こら、俺達に素手で触るなよ若造!」 とか言っているのかもしれない。なんだか高貴なオーラを発している。 じいちゃんかあ。昔気質でうるさいけど嫌いじゃなかったな。気分がいい時はいろいろ昔の話をしてくれたっけ。 郵便局や電話局は国営だった、民営化されたなんて今も信じられない、なんて言ってたなあ。 雑誌に文通相手……ペンフレンド募集のページがあって、住所も電話番号も全部乗せてあるのが普通だったとか。 タレントの個人情報も堂々と雑誌に公開されていたとか。 ネットが普及した時代にそんな事をしたら、逆に犯罪を誘発する犯罪になりそう。 古い切手にはプレミアがついている可能性もあるけど、そんなの興味がない俺には全然分からない。 でも、それでも分かる価値がある。 例え熱心な切手の収集家が今でも存在していて高値で売れるとしても、しめしめと売りに出すのは気が引ける。逆に1ドルにも1フランにもならないとしても、丸めてゴミ箱にシュートするのは忍びない。 だって俺が生まれる前から、誰かが大切にして来た物だから。それにこの数、何百枚あるんだろう。 とりあえず捨てないで置いておこうかとアルバムをぱらぱらめくってみると。 ん、これは何だろう。 封筒が挟んである。
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