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戴冠式
先週から街はもうお祭りムードだったし、昨日の舞踏会はかなり遠方の国からも王族がたくさん来ていた。
リューラなんて二年前に王とは宣言していて戴冠式がまだだっただけなのに……かなり期待されているらしい。
「サライド、用意はいいか?」
父さんに聞かれるがそんなのいい訳がない。
日付が変わってからリューラにあんなことを言われていて、そこから帰った俺はほとんど眠れなかった。
というか、あんな無茶苦茶なことを言われて、キスをされまくって……眠れるわけがなかった。
「……ヒドい顔だな」
父に顔を覗き込まれて肩を竦める。
「式の間、寝るかも」
「絶対やめろよ?」
本気で凄まれて一応頷いたが自信はない。
父さんは今日は後見としてではなく公爵家の列に並ぶし、俺はその後ろだから振り返られたり、イビキなんてかいたりしたら一発アウトだ。
「昨夜も遅くまでほっつき歩いていたんだろう?もう少し自覚しろよ?」
それがリューラの部屋に居て告られて、押し倒されて、キスされていたと知ったら……父さんはどうするだろうか?
あー……キスしたんだよなぁ。
唇に触れてうーん、と悩む。
考えて、下手したら父さんが首を吊りかねないことに気づいて俺は固く口を閉じた。
街より王家の城の方が近いのに聞こえてくる街中の音楽。
市民たちは今日も笑顔で愛する王のために祝い、祝杯を交わして踊るんだろう。
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