戴冠式

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 長い。  まだ王族も登場していないのに戴冠式を行う広場にもう長いこと並べられていてうんざりする。  こんなただ狭い距離感で並んで待たされるならもう少し家に居て横になっていたかった。だが、 「サライド、顔」  いつも柔和な父さんも今日はいちいち細かくてうるさい。  別にリューラなんてまだずっと後にしかこの場に来ないだろうし、式だって開始時間までは二時間以上ある。  まだそれだけ長い時間ただ立ち続けると思うとげんなりした。  本当、王族や公爵のイベント毎は無駄が多い気がする。  そんな時間があるならせっかく色々な国の王や公爵たちが揃っているのだから有意義に使って話を進めればいいのに。  形式を重んじるとか、正直どうでもいい。  時代に合わせてもっと柔軟に今の時間を使った方がいいとなぜわからないのだろう? 「なぁ、サライド。今日ドラモントを見かけないんだが……知らないか?」  同じように飽きたらしい見覚えはある学友にコソッと言われて適当に誤魔化した。  俺自身本当に知らないのもあるが、そもそも名前も思い出せないような奴に言う必要はない。  タイを直して姿勢を正すと、父さんと目が合って軽く頭を下げておいた。  パー!!とラッパの音がしてやっと現れた王族が並んでいる俺たちの間を抜けていって俺たちは順番にその後に続く。  だが、まだ始まるのはパレードでここからもかなりの長丁場だ。  そんなのより俺はもうすぐにでも帰って早く眠りたい。
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