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俺と父さんは後ろ向き、リューラとリティナは正面を向いて座る。
もう拍手と歓声が凄くて演奏されている音楽さえ聞こえない。
そんな中でもリューラは完璧な笑顔でその声援に応えていてさすがだ。
俺なんか眠いし、いつもとは違う堅苦しい服でもう帰りたいのに。
一際大きくラッパが鳴ると、パレードが動き出してまたワッと歓声が上がった。だが、
「リューラ様〜♡」
「え!?何であの子息が!?」
「本当!サライド様まで?またワガママ放題言ったんじゃないの〜?リューラ様はお優しいから」
黄色い声援に混じる驚きの声と批判と排除の目。
慣れてはいるが、気分がいいものではない。
聞こえてきた方に目をやるとパッと目を逸らす女を何人か見つけて睨んでやる。だが、
「サラ!今日は睨まない!ね?」
立ち上がったリューラは俺の肩を組んできてヒラヒラとそっちに手を振った。
すると、すぐにキャーキャー騒いだりうっとりしたり……女たちはコロッと反応を変える。
「あ、でも、笑わないでね?みんな好きになっちゃうから」
コソッと耳元で言われて、
「なるか!ボケがっ!!」
吐き捨ててグギギとその頭を押してやった。
「サライド。言動に気をつけなさい。王になんて真似を」
すぐに父さんの低い声がしてジャケットの裾を引かれる。
「ふふっ!楽しいパレードになりそうですね?」
微笑むリティナに同調するのはリューラだけだった。
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