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「性格悪いわね!」  千枝華は答えず微笑を浮かべ続ける。  練習しつづけて身に付けた千枝華の笑顔は崩れることがない。 「将周さんは格式ある五百里家の一人息子よ。五百里家は古くは公家を先祖に持って、戦国時代には武士に転身して数々の功績を上げて、江戸幕府では影の実力者と言われて、明治政府からも一目置かれていたのよ!」 「存じております」 「あなたなんか、将周さんにふさわしくないわ!」 「それを決めるのは将周さんです」  愛姫はさらにキーっと感情を高ぶらせた。 「成金のくせに! あんたなんかトージーコーナーやシャトレーナのケーキでも食べて喜んでればいいのよ!」  愛姫の大きな声が響き、周囲の人が一斉に二人を見た。  なかにはトージーコーナーの社長夫妻、シャトレーナの社長夫妻がいる。  千枝華はひきつった笑顔で会釈した。 「トージーコーナーもシャトレーナもおいしくて私は好きです」 「貧乏舌ね!」  気付いていない愛姫は勝ち誇ったように千枝華を罵る。社長たちは顔をしかめて二人を見ている。 「先に将周さんに出会っていたら、私が婚約者だったのよ!」  愛姫は構う様子もなく叫ぶ。  将周は少し離れた場所にいて、この騒ぎに気が付いてはいない。
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