49人が本棚に入れています
本棚に追加
「性格悪いわね!」
千枝華は答えず微笑を浮かべ続ける。
練習しつづけて身に付けた千枝華の笑顔は崩れることがない。
「将周さんは格式ある五百里家の一人息子よ。五百里家は古くは公家を先祖に持って、戦国時代には武士に転身して数々の功績を上げて、江戸幕府では影の実力者と言われて、明治政府からも一目置かれていたのよ!」
「存じております」
「あなたなんか、将周さんにふさわしくないわ!」
「それを決めるのは将周さんです」
愛姫はさらにキーっと感情を高ぶらせた。
「成金のくせに! あんたなんかトージーコーナーやシャトレーナのケーキでも食べて喜んでればいいのよ!」
愛姫の大きな声が響き、周囲の人が一斉に二人を見た。
なかにはトージーコーナーの社長夫妻、シャトレーナの社長夫妻がいる。
千枝華はひきつった笑顔で会釈した。
「トージーコーナーもシャトレーナもおいしくて私は好きです」
「貧乏舌ね!」
気付いていない愛姫は勝ち誇ったように千枝華を罵る。社長たちは顔をしかめて二人を見ている。
「先に将周さんに出会っていたら、私が婚約者だったのよ!」
愛姫は構う様子もなく叫ぶ。
将周は少し離れた場所にいて、この騒ぎに気が付いてはいない。
最初のコメントを投稿しよう!