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「こちらへ」
「え?」
「早く、このまま注目を浴びていたくなければ」
気が付けば周りの人たちは三人をじっと見つめていた。
男性は千枝華の肩を抱き、さっと会場の外へ連れ出した。
廊下は人気がなく閑散としていた。
「大丈夫?」
男性が優しく声をかけてくれる。
「大丈夫です。すみません、私のせいで。失礼します」
千枝華はパーティーバッグからハンカチをだして男性のスーツを拭いた。
この程度では意味はないのかもしれないが、そのままにはできなかった。
「優しいね。さっきも、からまれていたのにご令嬢をかばった」
彼はそっと千枝華の手を取る。
「かばったわけではありません」
千枝華は彼の手をほどこうとする。が、彼は手を離してくれない。
「意外に気が強いんだね」
彼はくすくすと笑った。
「優木千枝華さん。ユウキテクノロジーズ株式会社のお嬢さんでしょう?」
「そうですけど……」
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