49人が本棚に入れています
本棚に追加
5
山中湖の湖畔では紅葉祭りが開催されていた。
暮れかけた日を背に会場に着くと、たくさんの露店が並び、人々がにぎやかに行き交っている。数か所に焚火がたかれ、見た目にも温かく人々を明るく照らしている。
その火に長い棒を差し出して和やかに笑い合う人たちがいる。
「マシュマロだわ」
「ほしい?」
聞かれて、千枝華は即座に頷く。
店に並ぶ間にも、千枝華はわくわくと焚火を眺めた。
二人でマシュマロを買い、長い棒についたそれを火にかざす。
が、すぐには焼けない。
じれったくて、千枝華は炎に直接マシュマロをつっこむ。
直後、マシュマロが燃え上がった。
「どうしよう!」
千枝華が焦ると、将周は苦笑して自分のマシュマロで押さえて火を消す。
なんとか鎮火して、千枝華は少し焦げたそれを食べる。口の中でふわりと溶けて、甘さが口いっぱいに広がった。
「おいしい!」
将周は千枝華の笑顔に満足そうな笑みを浮かべ、自分のマシュマロを口にする。
「あつっ!」
「大丈夫?」
大丈夫、と将周は笑った。
最初のコメントを投稿しよう!