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 千枝華も聞いたことがあった。父と母が初デートに行ったのが紅葉で、彼女が生まれたときにはそれにちなんで名前をつけたのだと。  奇しくも千枝華と将周の初デートも紅葉だった。 「名前負けだわ」 「そんなことはない。君は綺麗だ」  真顔で言われて、千枝華は照れた。つなぐ手にぎゅっと力をこめる。 「こういう形で来ることになるとは思わなかったな」  将周は少し残念そうにつぶやいた。 「どういう形でも一緒に来られてうれしいわ」 「いつも前向きに言ってくれるね。そういうところに俺は支えられている」  千枝華は意外な言葉に目を見開いた。将周は優しい笑顔を彼女に向ける。 「気付いてなかった?」 「ぜんぜん……」  時間差で、胸にうれしさが満ちる。彼の支えになっているのなら、そんな喜ばしいことはない。 「あいつ、本当に仕事に失敗してるな」 「どうして?」  大和のことを言っているのだと察してたずねる。将周の優しい目が千枝華を見つめる。 「俺は君への想いが強くなった」  千枝華はどきっとして将周を見つめ返す。  気が付けば周囲に人はおらず、二人きりだ。  はらり、と色づいた葉が舞い落ちる。  将周が彼女の手を引き、立ち止まらせた。
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