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「パパ、服そこに置かないで! 部屋に持ってってよ!」 「わかってるよ。ちょっと置いただけだって」  言い訳をしつつ、つい先日もリビングのソファに放置した上着を真理愛が部屋まで持って来たのを思い出し体裁が悪い。 「いや、逆だよな。いい年して娘に注意されてさあ」 「……あたしはパパのこと、ホントに『どうしようもない』なんて思ってないよ」  情けない父親の呟きに、慰めるように声を掛けてくれる娘。まったく、逆だ。 「真理愛、ちっちゃいときは天使みたいに可愛かったんだよ」  十年前の幼い娘の姿が頭を過ってふと零れた台詞に、真理愛が頬を膨らませる。 「何よ、今は可愛くないって!? こういう『可愛くない』こと言わせてるのはパパでしょ!」 「そういうところがもう違うだろ」  圭亮は笑いながら考える。  初めて知った頃の言葉も笑顔もなかった儚げな少女と、今こうして軽口を叩き合い日々を共に過ごしている事実を。  ──奇跡みたいな話だよな。この子が俺の人生に現れたこと。まるで「何か」から遣わされたみたいだ。  真理愛は初めて会ったあの頃からずっと、今も圭亮の可愛い大切な使だ。  この先、娘がいくつになっても。                               ~END~
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