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掃き溜められた死体を見た比嘉は、死体や被害者の血痕、オフィスに散らばったゴミは、目的があって一か所に纏められたわけではなく、結果としてそうなったのだと現場写真を見て考えていた。
現場には足跡も古いものを除いて残されていない。あらかじめシートを敷き、その上で犯行に及び、殺害、切断後にシートを取り去った。その際に、シートの上にあったものが一か所に集まったのだ。
床に痕跡が残っていなかった理由は、それで一応の説明がつく。だが、オフィスの机上を見ても、激しく争っているのは明らかだ。しかし、その机上に被害者以外の痕跡はなかった。
「防護服でも着ていたとしたら動きも制限されますよね。女とかお年寄り相手ならまだしも、被害者は若くて健康な男ですから、そんな装備じゃ制圧できないでしょうし」
川島の先輩である戸塚伊央が、資料を忙しなく捲りながら零した。
「女とかお年寄り」と、体力的に弱いという意味合いで発した戸塚は、自身もその「女」に含まれているとは頭の片隅にもない。
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