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「熊本県警に手柄を全部渡すこともなかったんじゃないですか?」
熊本を発って博多駅でのぞみに乗り換え、走り出した車内で川島が開口一番溢した言葉に、戸塚は車窓へ視線を移しただけだった。返事が返ってくる気配のない戸塚に川島は頭を掻いて、足元に置いてあったビニール袋に手を伸ばした。
「それ、夕食に買ったんじゃないの?」
博多駅の売店で買った弁当を開け始めた川島を見て、戸塚は呆れて言った。熊本駅に向かう途中でラーメンを食べてきたばかりだ。
「まさか。まだ三時ですよ? そんなに早く買わないでしょう、普通」
「『まさか』って言われても……。川島君の普通なんて知らないし」
普段と変わらない川島に嘆息しつつ、戸塚は捜査の行方を憂慮していた。
「丹田慈巳か……」
リンドウを採取した牧場のオーナーは、厚生労働大臣政務官の丹田だった。その丹田が事件とどうつながっているのか、比嘉が東京で調べているはずだ。
「大丈夫かな……」
悩む戸塚に、半分にカットされた明太子をひと口で頬張った川島が、口の中ではじける明太子の香りを楽しんだ後に「それは」と口にしたかと思えば、続きを話す前にもうひと切れを頬張った。
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