第六話

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「それは、警部に考えてもらえばいいですよ。そのための警部なんですから。……飲みます?」  自動ドアが開いた先で頭を深く下げている社内販売員を指さして川島が訊ねると、戸塚は川島の予想に反して頷いた。 「え? 飲むんですか? コーヒーのつもりで訊いたんじゃないですよ?」 「何よ、自分から訊いておいて。ビールでしょ? 一本だけね。帰るまでにその程度のアルコールを分解する時間はあるでしょ」  川島は戸塚からの返答に無邪気な笑顔を見せ、販売員に手を挙げた。 「ビール飲んじゃうついでに言っても良いですか?」  缶を開けるのと同時に、川島は自らの口も開いた。 「ビール飲んでるから、オフタイムの雑談ってわけ?」  自分の意図を汲んでくれた戸塚に感謝し、川島は言いにくさを炭酸と共に胸の奥へと押し込めた。 「リンドウ……あ、花の方のです。リンドウを採取した場所なんですけど、県道上ってことにはできないですかね? それなら証拠としては少しだけ弱くなっても、牧場の捜索令状は取れるでしょう? そうすれば、あの小屋の中も調べられますし……」
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