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戸塚だけならまだしも、比嘉がその方法を許すとは思えなかったが、方法のひとつとして川島は提案した。
「どうしました?」
川島がそう戸塚に訊いたのは、彼女が予想外の反応を見せたからだ。笑みを見せたかと思えば、喉を鳴らしてビールを飲んだ。
「もう警部経由で、熊本県警には令状請求するように伝えてある。川島君が今言った通りの方法でね」
「でも、もしバレでもしたら……」
「マズいって? さっきから自分が言っといてなんなの。相手はそれ以上の不正をしてるんだから、手段を選んでる場合じゃない。川島君もそう思ったから口にしたんでしょ?」
「そうなんですけどね。……よし、覚悟を決めましたよ」
満足げに頷いた戸塚は、残ったビールを一気に空けると、目を閉じた。熊本に来てからまともに休めていなかった戸塚は、そのまま約五時間眠っていた。
戸塚が寝息を立てていた頃、警視庁では、脇坂が繰り返し溜息を吐いていた。
「警部、どうしても国東殺害の証拠が足りないですね」
比嘉は椅子の背もたれに体重を掛け、頭の後ろで腕を組んでいる。
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