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第一話
凄惨な殺人事件の現場。
文字にしてしまえばそれだけのことだ。だが、その現場を目にした警視庁捜査一課の比嘉修二警部は、その異様さに首を捻っていた。
「酷いですね……。ゴミ同然に扱われている」
同時に現場の入り口に立った比嘉の部下である川島翔太が、マスクを着けている鼻と口を右腕で押さえながら言った。川島は比嘉とは少し違った感情を持っている様子だ。
「凶器……いや、道具の見当も付かん。どうして、こんなバラバラに……」
比嘉は過去に、バラバラ殺人事件の捜査を二度経験している。そのどちらともが、死体を遺棄する方法として、死体をバラバラにしていた。
だが、今回の死体の状況は明らかに違う。
「これ、殺害現場もここですよね?」
川島の呟きに、比嘉が「多分な」と頷いた。
現場となった港区浜松町に建つオフィスビルの一室に入ることなく、入口から見ているだけの二人には、バラバラにされた死体の切り口までは見えない。この場所が殺害現場だと二人が考えたのは、天井を見て推察してのことだ。二人が見上げた天井には、切り取った四肢を振り回したかのように、帯状の血痕が幾筋も散っている。
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