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どこか遠くを見るように目を細めて語る蒼矢を、影斗は薄く相槌を打ちながら眺めていた。
「…漠然とですけど、どちらの選択を取るか…自分の中でせめぎ合ってます。『アズライト』が抜けることで、みんなに負担をかけることは重々承知してるんですが…留学すべきかもという思いも大きくなってるというのが、今の正直な気持ちです」
「ちなみにこの話、烈には?」
「!」
ふいに影斗から烈の名を出され、蒼矢は我に返ったようにはっとし、首を横に振った。
「実は、まだできてません。自分の中で決めかねてる段階で迷いを共有させてしまうと、烈の負担が大きいかなと思って。そういうこともあって、先に影斗先輩に相談したかったんです」
「なるほどな」
「…すみません、俺の勝手な都合に先輩を巻き込んでしまって」
「いやまぁ、初手の人選としては正しかったと思うぜ」
恐縮する蒼矢をとりなし、影斗は深く息を吐き出してから、再び視線をやった。
「蒼矢、とりあえずもういっぺん最初っからよく考えてみろ。…『セイバー』の件を抜きにするのは当然のこととして、もちろん結子さんの方の都合も一旦置いといて、だ」
「!」
大きな目をぱちくりとさせる蒼矢へ、影斗は静かな表情を保ったまま、低い声で言葉を送った。
「まず、お前自身を最優先に考えろ。周りのデメリットは一切捨て置いていい。お前にとってどの選択肢が一番有益なのか、純粋に自分の将来だけを想像して、答え出せ」
「…!」
「それでも迷いが残るようなら、最後は烈に決めてもらえ。お前はそれに従えばいい。…それならきっと後悔することはねぇはずだ」
「…はい」
やや語気に圧のある助言を真剣な眼差しから注がれ、蒼矢はやや気圧されながらも、はっきりと頷き返した。
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