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ちらりとレオンハルトさまを見ると、彼はただ穏やかに笑っていた。
……なんだかどんどん、王都の中心部から外れていっているような気がするのだけど……
そして、ぴたりと馬車が止まった。目的地についたのかな。
レオンハルトさまが立ち上がり、馬車を先に下りた。そして、私にそっと手を差し出す。
「さあ、お手をどうぞ」
「ありがとうございます」
一度深呼吸をしてから、彼の手に自分の手を重ねる。
馬車を降りると、私の歩調に合わせて歩き出す。……手を握ったままなのは、わざとかしら?
胸の鼓動がドキドキと早鐘を奏でる。
歩調を合わせてもらっているからか、とても歩きやすい。
「ここが目的地ですか?」
レオンハルトさまを見上げて尋ねると、彼は私に視線を移して「もう少し歩いたところです」と答えてくれた。
もう少し歩いたところ……?
そして、やっぱり歩きやすいと感じる。
ダニエル殿下と歩くときは、彼の歩調に合わせるのが大変だったことを思い出し、眉を下げた。
結構な高さのヒールを履いていることを理解してほしかった……なんて、言い訳よね。
一度口にしたことはあるけれど、自分のペースを崩すのがいやだったのか、とても険しい表情をされたのよね……
それに対して、レオンハルトさまは私の歩調に合わせてくれいるらしく、とても歩きやすい。
こういう気遣いができる男性って本当に素敵! ますますぐっと来ちゃう!
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