お見合いで一目惚れ!? 3話

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 私は私の意地のためにいろいろなことをクリアしてきた。  ダニエル殿下の婚約者として……いいえ、王族の婚約者として、相応しくないと思われたくなかった。それは私のプライドが許さない。 「愛は芽生えていない、と?」 「芽生えそうなところを、ぐしゃっと踏みにじられた、が正解ですわ」  扇子を広げて口元を隠し、目元だけで笑う。  婚約者になったのは十歳の頃。  ダニエル殿下が私を選んだと聞いたときは、とても嬉しかった。  でも、その嬉しさが続いたのは数ヶ月だけ。  王族の婚約として、私は一気に忙しくなった。  家庭教師が増え、毎日張り詰めたように生きていたのよね。  ダニエル殿下と会うときも緊張した。  殿下はそんな私を見てどう思ったのか、次に会うときは女性と仲睦(なかむつ)まじい姿を見せつけてきたのよ。  彼よりも年上の女性だった。彼女に甘える姿を見せつけてきたのだ。  その光景はあまりにも毒だった。だって私、ダニエル殿下に好かれようと思っていたのだから。  あのときの感情がよみがえる。いろいろ複雑な気持ちだったのよね。  私がもっとがんばれば、ダニエル殿下は私のことを愛してくれるんじゃないかって、努力を怠らなかったことだけは、自分を褒めたいわ。 「それでも、婚約を続けていたのですね」 「さすがに王族との婚約を、こちらこそ解消するのは……」  だからこそ、卒業パーティーで婚約破棄を宣言されたときには驚いたけれど、これでダニエル殿下の婚約者ではなくなることに安堵もした。  こんなに素敵な人と、お見合いできたしね!
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