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自画自賛でなんとか自我を保とうとしたけれど、レオンハルトさまは目を数回瞬かせる。
「本心なのですが……」
そして、心底不思議そうに首をかしげ、追撃をくださった!
……おかしいな、伯爵家の令嬢として、ダニエル殿下の元婚約者として、こんなふうに褒められることは多々あったのに!
婚約が白紙になって、私の気が抜けたのかな!?
それとも、この方が私の好みにばっちり一致しているから!?
「あ、ありがとう存じます……」
私が照れちゃったら、どうしようもないじゃないー!
でも、でもっ、とってもタイプなイケメンからそんなことを言われたら、さすがに照れるわ!
平常心、カムバック。
深呼吸を何回か繰り返すと、チューリップの甘い香りが鼻腔をくすぐった。
「あ、良い香り……」
「甘い香りですね。エリカ嬢も良い匂いがします」
だからっ! そういうことをっ! さらっと口にしないでっ!
――と、心の中で騒いでから気付く。
……私、香水つけてないんだけど……?
シャンプーやコンディショナーの香りかな? それとも、ヘアオイル?
「……あの、私、そんなに匂いますか……?」
「ふわっと香るくらいです。香水って感じもしないので……不思議だなぁ、と」
「ヘアオイルの香りかしら……?」
匂いがきついのは苦手だから、試行錯誤を繰り返し、自分で用意したのよね。あまり香らないヘアオイル。
香りと香りがぶつかって具合を悪くしたことがあるから……
ちなみに、そのヘアオイルはお母さまやメイドたちにも大人気だった。
みんな一度は経験があるのかもしれないわね、匂いのぶつかり合い……
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