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耳をつんざくような音が部屋中に響き渡り、イライラしながら枕元に手を伸ばした。目覚まし時計の頭を強く押して、むくりと布団から顔を出した。
なにかがすっぽりと抜けているような感覚が、胸元に留まっているような気がするが、なんだったかな……。思い出そうとしても、思い出せない。
それに、今日はなにかしなくてはいけないような気がした。温もりのこもった布団から抜け出して、両手を天井に突き出す。ぼんやりとしていた頭が、はっきりしてきた。
そうだ。僕は今日、幼馴染と話をしなくてはいけない。遠くから見つめ続けて、真実すらも覆い隠してきた。思えば、知るのが怖かったのかもしれない。僕が危惧していることを、彼女が発するかもしれない。
でも、その恐れは振り払おう。体の奥底を、柔らかくて温かい羽が包んで入れているような感覚があった。この世界のものではたとえきれないほどの包容感が、溢れ出してくる。
着替えて、朝食を摂り、僕は外へと駆け出した。
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