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そのときにはもう、噂は偽りなのだと確信を得ていた。
まるで巨大な蜘蛛の巣が張り巡らされていそうなこの地に、生き物がいる気配が一切しなかった。廃墟にあるまるで山のような高台、そこに噂の生き物がいると言われているけれど、周囲は霧でほとんど視界を奪われている。これ以上先の未知の空間に足を踏み入れるのは、愚か者だけだと罵倒されるのは目に見えていた。
だけど、もし本当にいたら……?
まだ、もう少しだけ、信じてみてもいいかもしれない。
霧の近くに寄って、手を伸ばしてみる。まるで幽霊を掴んだような感覚が走り、背筋に寒気が走る。
その直後、突っ込んだ手が、何かに強く引っ張られた。踏ん張ることすら許されず、背後から誰かに強く押されたように、前のめりになって倒れ込む。
腕は前方に引っ張られたままだった。このまま前のめりに倒れてしまったら、きっと地面はもう目の前だ……。
全身に衝撃が走ったあと、僕は意識を失った。
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