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冷たい。
全身が冷えて、四肢が震え始める。
僕には幼馴染がいた。
彼女は出会った頃から容姿端麗で、男女構わず人気があった。太陽のように照る金髪。ふっくらと厚みのある唇。そして何より、明るく道を照らし出してくれるような魅力的な笑顔……。そんな彼女を幼馴染にもてるだけで、僕は悦に入っていた。
だけど、次第にそれだけでは気が済まなくなっていた。
大人に近づくにつれて、彼女はすれ違った人が立ち止まって振り返るほど、美しい人になっていった。彼女と一緒にいることで、僕の劣等感が吹き飛ばされた。
僕の隣で笑ってくれているだけで、あたりの空気は和やかで、温かいものになった。ただ、隣にいてくれるだけでよかったんだ。
だけど、いつしか彼女は僕に近寄らなくなった。
それどころか、別の男と一緒にいることが多くなっていた。教室の片隅から、教室の真ん中で注目を浴びる彼女たちを、ずっと黙って見つめ続けた。
彼女にとっての幸せは、僕と一緒にいることではなかったのだ。
その姿を見るだけで、胸が締めつけられる心地がした。ときには、彼女との思い出に浸って、涙を流した。僕に寄り添ってくれたのは、大丈夫かと声をかけてくれる友人だけ。
もとの生活を取り戻したい。彼女の気を、僕にもう一度向けてほしい。
誰かが、きっとこの願いを叶えてくれる。……なんて、自分で解決しようと思わないのは、笑い種だけど。平凡な僕には、そんなことなんてできないと、どこかで自負していた。
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