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「おまえは願いを叶えてもらうと言ったな? 人間の願いには興味がある。話してみるといい」
「でも、叶えられないんですよね?」
ようやく体に力が入るようになって、フラフラしながらも立ち上がった。もし仮に本物の天使だったら、このままでは無礼だったから。
彼はため息をついて、肘を王座から離した。
「いいから、話せ」
口調は荒いのに、その言葉にはなぜか親しみを感じる。胸の奥底に蟠るものを、包み込んでくれるような柔らかさがあった。優しい毛布に包まれているような気すらした。
喉まで、すでに言葉が出かかっていた。
彼に話しても大丈夫だろうか? 目の前にいるのは実はクラスメイトで、情けない姿を晒そうとしているのではないか? そしてそれを動画とかに撮って、みんなに見せびらかそうとしているのではないか?
尋常ではないほど、嫌な方向に思考が巡る。
正面に捉えたのは、威厳のある、凛とした顔だった。
ああ、もしかしたら本物なのかもしれない……。容姿や口調には不審を抱くが、佇まいは神聖さが滲み出ていた。むしろ、この薄暗い廃墟の中であるからか、神々しさすら感じられた。
ゆっくりと口を開く。
話しても、どうしようもないのに……。
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