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「僕には幼馴染の女の子がいるんです。その彼女が突然、振り向いてくれなくなったから、僕のことを見てくれるように、お願いしに……」
でも、さすがに羞恥は拭えなかった。これはもはや、恋愛相談に近しい。そんな話を突如されて、きっと理解できるはずがない。天使や神のいる世界ではきっと、そういう事情で悩むことなんてないのだろうから。
声が掠れて、続けるもきっと相手には伝わってない。彼女が僕に脈があるようにしてくれ、なんて言ったら、一体どんな顔をするだろうか。
だけど、意外にも彼は罵るような素振りは見せなかった。
逆に、彼は眉間に皺を寄せた。口から息を吸って、スッと王座から立ち上がる。先ほどまでは見えていなかった霧が、彼が離れた王座に近寄って、視界から隠蔽した。
彼が僕に寄ってきて、距離を縮めた。
ふわりとした生温かい風が、僕の顔に吹きつけた。
「なるほど。そのようなことか」
「あ……で、ですよね! やだなあ、僕。なんてことをお願いしに——」
体がビクッと震えた。
だって、彼が急に頭を掴んできたから。
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