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第五章「草木花の音階」
夜、閉店間際。ときじく薬草珈琲店の入り口の扉がガチャリと開いて、一人の男性が店内へと入ってきた。顔立ちの整った、銀髪の男性。
店内の掃除を進めていた店長の関口葵は店に入ってきた男性に気づき、掃除の手を止める。そして、それが誰であるかに気づくと、ちいさく「あっ」と声を上げた。
男性は軽く会釈をしてから、はにかむような笑顔で葵に問う。
「この店で、一緒に仕事をさせていただくことは可能ですか?」
葵は男性の言葉を耳から身体に取り入れ、頭の中で反芻する。そして刹那の後、その真意を知り、目頭を熱くしながら男性に返事を返した。
「もちろん、是非、一緒にお仕事させてください」
二人は美しい笑顔で見つめ合う。そして、ときじく薬草珈琲店は幸福なオーラで満たされた。
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