花冠と翼

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花冠と翼

 教室の無機質な窓の向こうには、薄い塊になったわたあめのような雲が水色の空に浮かんでいる。少し色づいた樫の木の枝が風でわずかに揺れると、秋色の葉が空に舞った。  グラウンドでは、地面を蹴る音と共に、どこかのクラスの生徒達の掛け声が聞こえる。でも、三階の教室の真ん中あたりの私の机からは、その姿は何も見えない。  存在は確かにそこにあるのに、目には見えない。私と同じ中学生の生徒であることは間違いがないのだろうけれど、なんだか不思議だ。    眠たくなる日本史の授業を受けながら、私はぼんやりと給食の事を考えていた。  今日の給食は、揚げパンにブロッコリーのシチューと牛乳。メインは白身魚のフライだ。さらにプリンも付く! 楽しみだな〜。  他の中学では、少子化と共に、各自のアレルギー対策と多様性の波に乗って、お弁当か給食を選べるようになっている所もあるらしい。 私の中学では、少子化ゆえにクラスメイトで基本同じものを食べる。食への関心を共有しようという方針の下で、お昼ごはんは給食になってるんだ。  もちろん、各自のアレルギー対策も万全だ。そういう配慮って、当たり前のようだけれど、とても大切なんだって思う。
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