食用天使

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 灰色の世界にゴウンゴウンと機械の音だけが響いている。天使肉加工工場――ここと独房だけが、俺の世界のすべてだ。  毎日毎日、朝の七時から夜の七時まで働くだけの人生だ。今もこうして、ベルトコンベアに乗って運ばれてくる天使が機械の刃に刻まれて、いくつかのピンク色の小さな肉の塊になるのをただ、眺めている。  『天使』と聞いて可愛らしいアニメやゲームのキャラクターを思い浮かべただろうか? それが殺されるのをただ見ているなんて可哀そう? はっ。あれを見ろよ、まるで豚だ。  ゴウンゴウンと、天使が運ばれて来た。身長百八十センチほど、体重は三百キロはゆうに超えているだろう、自らの体重を支えきれなくなって足の折れた、ダルマのような巨体である。背中に生えた翼が、とても小さく見える。  彼……もしくは彼女は虚ろな瞳で、『ぎゅっぷ~ぃ』と奇怪な鳴き声をあげた。意識はあるが、知性はないらしい。  やがて、左右から大きな刃が回転しながら迫って来て、天使をバラバラに切り刻んだ。俺は、バインダーに挟まれた紙にボールペンで線を引いた。本日、十五体目の天使である。 「ふぁああ~~」  あくびをしたら、うしろに立っていた看守に睨みつけられた。ただ立って見ているだけの業務、さらに時刻も昼過ぎなので眠くなるくらい許してほしい。  
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