拉致

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拉致

 美咲は、仲間たちと共に立ち上がる準備を進めていた。しかし、職場の状況はますます悪化していた。シニアハラスメントに対する抗議が高まる中、一部の年配社員たちは彼女たちの行動を「カスハラ(カスタマーハラスメント)」として逆手に取り、若い社員をさらに圧迫する戦術に出てきた。それは、抑圧された者たちの声を封じるための手段だった。  ある日の昼下がり、美咲の同僚であり、親友でもある理恵が突然姿を消した。理恵は職場での厳しいストレスから、リストカットという方法で自傷行為を繰り返していた。そのことを知っていた美咲は、彼女がどのように辛い気持ちを抱えているか理解していた。彼女が理恵に寄り添うことで、少しでも助けになればと思っていたが、理恵を失ったことでその想いが深く心に刺さった。  美咲は理恵の行方を追うため、彼女がよく行っていたカフェ「トカレフ」に戻った。店内には、同じような悲しみを抱える人々が集まっていた。その中で、ゴスロリファッションに身を包んだ少女が目を引いた。彼女は静かに座り、窓の外を見つめていた。また、その少女の傍らには、理恵の好きな香りの香水が置かれていた。  美咲はその少女に話しかけると、彼女が理恵と友達であることが分かった。少女は名前を「メイ」と名乗り、理恵は最近、職場でのストレスに悩まされ、さらに悪化していたことを教えてくれた。美咲の心は不安でいっぱいになり、急いで理恵の足取りを追うことを決意した。  東京の暗い街を彷徨う中、美咲は次第に不審な感覚を覚えた。スカウトのような男たちが近づいてきて、理恵の姿を知っているか尋ねてきた。そして、その男たちが理恵を拉致する計画を立てていることに気づく。彼女は恐れを感じながらも、何とかその場から逃げ出し、理恵を探し続けた。  やがて、美咲はある倉庫にたどり着いた。恐怖に怯えながら扉を開けると、思わぬ光景が広がっていた。薄暗い室内には血溜まりが広がり、理恵の姿は見当たらなかった。しかし、そこには理恵のゴスロリドレスが無造作に投げ出されていた。美咲は冷や汗をかきながら、その場を離れようとした瞬間、後ろから何者かに捕まれた。 「お前も一緒に遊びたいのか?」と不敵な声が耳元でささやかれる。美咲は恐怖で身を震わせながらも、理恵を救い出すために立ち上がることを決意した。このままではいけない。彼女は自らの内なる強さを信じ、仲間たちと共に理恵を救い出すために動き出すのだった。  物語は、さらに深い闇へと進んでいく。美咲は自己と向き合いながら、真実を追い求め、希望の光を見出すことができるのか。
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