0人が本棚に入れています
本棚に追加
エレハラ
美咲は、倉庫から逃げ出した後、恐れを振り払って理恵を助けるために行動を開始した。彼女はまず、東武警察署に向かうことを決めた。警察に訴え出ることで、理恵の所在を突き止め、救出できる可能性が高まると考えたからだ。
警察署に到着した美咲は、署長室に通された。署長は年配の厳つい男性で、彼女の話を聞く姿勢は冷淡だった。「そんな嘘のような話、信じられるか?」と彼は言い捨てたが、美咲は負けずに必死に訴えた。彼女は理恵のことで精神的に追い込まれ、リストカットを繰り返していること。さらには、最近「エレクトロニクスハラスメント」と呼ばれる新しいタイプのハラスメント被害にあったことを告げた。
署長は美咲の話に耳を傾けながら、彼女の精一杯の訴えに次第に心を動かされていった。エレクトロニクスハラスメントは、デジタルデバイスを通じて精神的に人を追い込む手法であり、特に若い世代に深刻な影響を与えていた。署長は問題の深刻さを理解し、捜査を開始することを約束した。
数日後、美咲と署長は再度会うことになった。その日は理恵の月命日であり、美咲は彼女を思う気持ちで胸がいっぱいだった。署長は捜査結果を伝え、理恵が行方不明になっている間に、いくつかの目撃情報があったことを教えてくれた。それによれば、彼女は宇都宮方面に向かったという。
美咲はすぐさま宇都宮へ向かうことを決意した。彼女は山の奥にある小さな村で、理恵を見かけたとの情報を得ていた。そこには、理恵が治療を受けるために隠れている可能性があると考えたからだ。美咲は信じられる唯一の希望を胸に、急いで山道を進んでいった。
山道を登る途中、美咲は心の中で理恵に語りかけていた。「待っていて、必ず助けるから。」美咲は理恵が持っていたゴスロリの小物を思い出し、彼女がどれだけ傷ついているのかを想像しながら、深い胸の痛みを感じていた。
やがて、美咲は目的の村に到着した。その村は、美しい自然に囲まれた静かな場所だったが、どこか孤独な雰囲気を醸し出していた。村の人々に尋ねて回った結果、美咲は理恵がその村に住む女性の元で治療を受けているという情報を得ることができた。
その女性は精神的なケアを専門としている治療者であり、理恵が自分を取り戻す手助けをしているという。美咲はその家を訪れる決意をし、家の前に立つと深呼吸をして心を落ち着けた。中に入ると、理恵はそこにいた。しかし、彼女は以前とは別人のように見えた。目はどこか遠くを見つめ、心を閉ざしているようだった。
「理恵!」美咲が声を上げると、理恵の目が光を宿した。だが、彼女の表情は複雑だった。「美咲……私、もうダメかもしれない。」彼女は静かに涙を流した。
美咲は理恵を抱きしめ、「一緒に乗り越えよう。あなたは一人じゃない」と伝えた。その言葉が、理恵に少しの希望を与えてくれた。
二人は、これからどのようにしてこの厳しい現実を乗り越え、悩みを抱えた仲間たちを助け合えるかを話し合うことになった。美咲は、理恵が再生する姿を見守りながら、エレクトロニクスハラスメントやシニアハラスメントとの闘いを続ける決意を新たにするのだった。
彼女たちの物語は、希望の光に向かって新たな旅立ちを迎えようとしていた。
最初のコメントを投稿しよう!