羨む私

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 彼と出会って一年ほど経ったある日のことだった。  遠方に、活動に出掛けて、たまたま二人帰っていた時のことだった。  「今日の仕事、大変だったよね。もう、やめちゃおうかな」  そう彼が言った。  確かに、活動は肉体労働で大変なことではある。  それでも、同意するのは、(はばか)られた。今日の訪問先の人は、今まで行ったどこよりも親切にしてくれた。とても活動しやすいところだった。  「お疲れ様です。ただ、私はそんな風には思えないです。みんな素敵な人でしたし、活動してていて良かったって思えました」  「やっぱり君は、天使のような人だね」  その言葉を聞いて、忘れていた夢を思い出した。  そして思わず、彼にたずねた。  「それってどういう意味ですか」  「そのまんまの意味だよ」  忘れていた夢が叶った。  それでも、不思議なことに達成感とかそういうのはなかった。
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