羨む私

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 看護師さんに扉を開けてもらうと、真っ先に妹が入って来た。  いくつになって三つ下の妹も天使のように無邪気だった。  父と母は、妹に続いて入って来た。  「天使みたい。あなたが生まれてきたときのように」  そう母が言って、父も、お義母さんも、お義父さんも頷く。  けれど、私には、それが分からなかった。いや、分かっていたけど、分からない振りをした。  「私も天使みたいだったの」  「そうよ。赤ちゃんは、天使よ。それに自分のことどもはみんな天使よ」  「そうね。大抵はそうでしょうね」  私の問いに母が答えて、お義母さんも同意する。  私の願いは、初めから叶っていたんだ。  そう思うと、自然とあたたかい水がこぼれ落ちた。  私は、天使だった。いや、私も天使だった。  そのことが、嬉しくて仕方ない。  二人の天使に囲まれた私は、幸せだ。
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