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「ん。美味しい」
駅前の公園のベンチに腰かけて。
サタくんは苺ホイップのクレープを食べ終えていて、あたしが食べ終わるのを待っている。
ほっぺにピンク色のクリームがついているのが微笑ましくて、くすりと笑ってしまう。
「サタくんほっぺ。クリームついてる」
「とって」
「いま両手塞がってるからあとでね」
「じゃあ舐めてよ」
きっと冗談のつもりだろう。
あたしを困らせて、その困った顔を見て喜ぶ彼の姿が目に浮かぶ。
だからあたしは瞳を閉じて彼の頬に舌を這わせる。
「……舐めちゃった」
「どう?」
「恥ずかしい」
素直に口にすると、笑われる。
「じゃあ、目瞑って」
「なんで」
クレープの最後の一口を名残惜しく思いながら口に入れ、ゆっくりと咀嚼する。
瞳を閉じて、チョコレートとキャラメルの奏でるハーモニーに酔いしれる。
ふんわり鼻腔をくすぐる甘いクレープの匂いが余韻のようにまとわりつく。
その隣で、サタくんが優しい声音で呟いた。
「すきだからだよ」
甘い匂いがつよくなる。
チョコレートとキャラメルと、苺クリームの。
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