1人が本棚に入れています
本棚に追加
「いいかい、わたしの天使」
わたしの天使。そう言われて寒気がした。
あたしは神父さまの天使じゃない!
――彼方は天使を解放する。
勢いよく顔をあげ、神父さまの顔につかみかかる。瞳。瞳を見て。
暗示をかけてやる。
人間の男と恋をした天使はもう不要なのだからいいかげん解放すればいいのだ。
「無駄だよ。わたしに暗示は効かない」
「そんな……」
「気が済むまで見つめていればいい。そして君がもっとも必要としている人間が誰なのか悟るがいい」
怒りで紅潮した顔の神父さまは、あくまで冷静に、あたしの瞳を見返している。
睨みつけても呪っても彼はどこ吹く風。
それどころか面白そうにあたしの瞳へ指を向ける。
「その綺麗な黒真珠のような瞳を、抉られたくはないだろう?」
最初のコメントを投稿しよう!